「The Knight Diaries」
第4話-獣-(ホラーストーリー)
18
ヒルデたちは、祠を中心に辺りを見張っていた。
またあの黄色い光が浮いて出ないか、目を凝らす。
「あいつは何であれ、人に化けられるようだ」
エスネが言った。
「さっき、私はグリフィン殿と森の奥で会った」
「俺は知らないぞ?」
ウィリアムが呆れたように言ったが、エスネは受け流す。
「ああ。貴公ではなかった。つまり、万が一の時は誰も信用できない…。もしかしたら、今も…」
ヒルデとウィリアムは同時に言った。
「違う!」
「だろうな」
エスネは鼻で笑った。
「貴公たちの様子を見ていると、本物だと私でもわかる」
「だけどさ」
ウィリアムがエスネの方へ体をねじりながら言った。
「俺もミス・ヴァーレンも、あんたが本物かわからな…」
彼が言いかけたとき、ヒルデは自分の前に現れたものを見て思わず叫んだ。
「エスネ!?」
暗い森の中から、ボロボロにやつれたエスネが姿を現したのだ。
だが、自分の真横にもエスネが居る。
ヒルデは剣を抜いて二人のエスネから遠ざかった。
ウィリアムも同じように剣を抜くと、さっきまで一緒に居た方のエスネに剣を向ける。
「そいつに騙されるな!」
ボロボロのエスネが叫んだ。
「そいつは偽者だ!」
ヒルデは頭が混乱して、二人のエスネに交互に剣を向け直していた。
「何を言う!」
一緒に居た方のエスネが、もう一人のエスネに叫ぶ。
「貴様の見え透いた嘘に惑わされると思うな!剣の錆にしてやる!」
ボロボロのエスネに飛び掛る、もう一人のエスネ…。
ところが、ウィリアムが飛び掛った方のエスネに掴みかかって、それを阻止する。
「お前こそ怪しいな!」
「お前は馬鹿か!」
もがきながらエスネが怒鳴る。
「放せ愚か者!」
ヒルデはまだどちらが本物のエスネなのか見極められずにいた。
どちらもエスネにしか見えない外見だし、違いは服の汚れ方だけだ。
ヒルデはボロボロのエスネを見た。
その時、ヒルデは気付いた。
彼女は僅かに笑っている。
ウィリアムがもう一人のエスネを捕らえているが、それを見て笑っているのだ。
当然、ウィリアムが本物のエスネを見極められたのなら、本物のエスネは安心するだろう。
だがあの笑い方には、何か違うものを感じる。
ボロボロのエスネがこちらに気付き、目が合う。
その目は、黄色に光っていた。
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